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100年前のカメラ [愛しきカメラたち]

私の写真機コレクションの中には、100年以上前のカメラ・・・冩眞機といふべきか。も数台含まれている。

そんなカメラ使えるの?
という声が聞こえてきそうだが、・・・・少し手を加えてやれば、今でも充分使えるのだ。

これは、ドイツのゲルツ社が作ったベスト・ポケット・テナックスというカメラ
1911年製なので、明治44年!!ということになる。

レンズは、同社製のダゴール75mmf6.8である。古今東西のレンズの中でも銘玉中の銘玉である。このレンズを使いたいので、このカメラが手許にあるといっても過言ではない。

ブログのプロフィール画像は、ゲルツ社の看板から取ったものであるが、看板の人物が手に持つカメラは、この様式のものである。

もう一台は、ドイツエルネマン社製のミニチュアクラップカメラ。当時の報道用のカメラはこのスタイルであった。(ただし、報道用は、もっとデカい。)
レンズはツアイスのテッサー。あまりの銘玉ゆえ、巷にあふれすぎて面白くないレンズである。しかし写りは文句ない。すべてのレンズの基本となったレンズである。
これは、1920年くらいの製造・・・大正モダニズム華やかなりし頃のもの。

しかし、このカメラは少々難儀な代物だった。

ヤフオクで買ったが、シャッター(現在の一眼レフに採用されているフォーカルプレーン式)の幕に小さな穴がいっぱい開いている・・・満天の星のように・・・笑


裏ブタを外して写真を撮る。シャッター幕がペラペラになっている。

これは、経年により幕のゴム質が劣化しているためだ。これでは、シャッター切る前にフイルムが露光してしまう。
こんなときは、どうするべきか?
シャッター幕を取り替える修理を業者に依頼すればよいが、重修理になるので、かなり費用がかかる。
なんとかならないかと、考えに考えを重ねていたが、先日東急ハンズの塗料売り場で、ゴムスプレーなるものを見つけた。

なんだコレは?

液体状になったゴムをスプレーで吹き付けるというものである。
金属に吹き付ければ、絶縁体になるし、また滑り止めにもなる。家具の底などにも吹き付けると重宝しそうだ。

色は無色をはじめ何色かあったが幸いなことに黒色が一缶残っていた。
これをシャッター幕に吹き付けてやれば、一気に穴がふさげるのではないか?
また、ゴムを吹き付けるので、常に動くシャッターの柔軟性を損なうことはないであろう。

なんとかなるんじゃないか?ダメなら専門家に修理に出せばいい。

と考え大手術を施工した。
この手のシャッターは幕が二枚ある。そこでまずその一枚に施術する。

周りをマスキングしてシューッ。充分に乾かしてからシャッターを巻き上げて、もう一枚のシャッター幕をマスキングした後シューッ。

乾燥の後、レンズ側から強力ライトを当ててみるとああ、残念。
塗布が一回だけでは充分に穴が塞がっていなかったようだ。

もう一度やり直し。

計4回のマスキングとスプレー塗布を行なった。
手間がかかったが、見事完成。
穴は完全に塞がったし、シャッターの動きにも差し障りがない。そしてなにより出来上がりが美しい。
その他カメラの可動部分に注油して完了。

これらのカメラは、アトム判カメラという。アトム判(6cm×4.5cm)フイルムをつかうからである。

現在の大型一眼カメラと比較のために記念写真。パチリ


これらのカメラは、現在ではこのフイルムホルダーが命である。

このホルダーがないと、ロール式のフイルムが使えない。もっともフイルムをそのサイズに切断して一枚一枚後に差し込んで撮影する方法があるが、あまりにも手間がかかる。(でも当時はそうして撮影していた。)


このようにフイルムを装てんして・・・


カメラにセットした後、裏ブタを引いてやってシャッターを切る。

このフイルムホルダーは、珍品中の珍品である。なかなか見つけられない。専門誌をしらべると、これは絶対数が少ない上、現在持っているのはマニアさんだから、なかなか手放そうとしない。だから市場にでることはほぼない!!という代物だった。5年ほど捜し歩いていたが、ある日なんでもない中古カメラ店のウインドウに並んでいた。

おおっ。これや、これや。ついに発見したぞ。

う~ん 15000円か・・・・・・・・。

これを高いか安いか。それぞれの立場で思いは違うだろうが、私の場合は、即お買い上げ!!
この機会を外すと、生涯二度と目にすることはないかもしれないと思うからである。

このベスト判フイルムは、クロアチアかどこかで、いまでも僅かに製造しているらしく手に入れることは可能である。またより大きなブローニサイズのフイルムを切って使う方法もある。私の場合は、もっぱら後者による。その手法は後日にゆずるが、慣れればたいしたことはない。


左がハッセルやローライに使うブローニサイズのフイルム。右がベストサイズフイルムである。
 
 
 
 
 

快晴のある日、近くの小山に登って試験撮影する。


これは、デジカメ映像である。


ベスト・ポケット・テナックス f8 1/250


ミニチュアクラップ f8 1/250
修理したシャッター幕の状態はいいようだ。

しかし、一部に光線漏れがあるなあ。また原因調査しなければ。こればかりは、実写してみないと分からないのでねえ・・・泣けるなあ。
 
 
 

ここは、海からの気持ちよい風が常に吹いている処なので、凧揚げする人がいつもいる。

今日は、帆船型の変わり凧が登場していた。

八幡屋の小山の草に寝転びて空に吸われしアトムのカメラ・・・どこかで聞いたような?


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いたさん

100年前の写真機なんて、博物館に展示しておくもの・・と思っていましたが、マニアの手にかかると修理して「今」使えるものなんですね。最近は、おもちゃみたいなカメラで偶然映ったような写真に味がある・・と楽しむ人たちもいるとか。写真道(ファジーさんの場合はカメラ道ですか?)は、奥が深いんですね。びっくりです。
by いたさん (2007-06-01 01:45) 

Agas

ふおおおおお!さすがは独逸製!
その時代に 1/250 があるのは凄すぎる…

ロールフィルムホルダ、これもまた素っ晴らしい。
15,000円は確かに悩む価格ではありますが、
現物見ちゃったらアウト的なパーツですよね~(^^

ハンザの69判ホルダを駆使してリリーを復帰させようと思ってる今日この頃です(笑)
by Agas (2007-06-01 08:26) 

おおっ!ホントに撮れてるーっ!!
こうして修理すれば、今でもちゃんと撮れるんですねぇ。。
フィルムも入手可能なんて、驚きました。
by (2007-06-01 12:56) 

Fuzzy

>いたさん。こんばんは。
 そうですねえ。私の場合は半分壊れているようなカメラを苦心惨憺して修理して、その結果まともな写真が撮れた時の喜びは、なんとも云いがたい達成感に満たされるので、なかなかやめられまへん。

>Agasさん。いらっしゃいませ。
 ロールホルダーはいかんせん、古いものですから取扱注意ですね。
 安心していても光線漏れの恐怖は潜んでいるので、注意してください。
 私も6X9の昭和8年型パールのジャンクをもってまして、ジャバラの光線  漏れをどうすべきか思案中です。

>うたにさん。
 昔のカメラは電池を使っていないので、修理すればなんとかなるところが面白くてなりません。フイルムも手作業でつくることができるので、あまり心配していません。こうやって泥沼に首まで浸かることになってしまっています(笑)
by Fuzzy (2007-06-01 20:20) 

天女が遊

愛しきカメラたち=宝物
100年以上前の冩眞機も・・・楽しみながら修理し・・・
使いこなせる ファジー さんを尊敬します。 
by 天女が遊 (2007-06-03 11:46) 

Fuzzy

>天女が遊さん。こんにちは。
 ありがとうございます。お恥ずかしいのですが、外には、大した趣味がないので、お見せしている次第です。
by Fuzzy (2007-06-04 07:12) 

ヶ太郎

「四四倶楽部」の掲示板から飛んできました~。
100年前のカメラですか!
カメラそのものも凄いけれど、
写るようにしてしまうファジーさんにも驚嘆。。
すっごくいぃ趣味ですね~。

100歳のカメラたちも、
実にいぃ顔しています☆彡
by ヶ太郎 (2007-06-06 13:05) 

Fuzzy

>ヶ太郎さん。いらっしゃいませ。こんにちは。
 評価していただきましてありがとうございます。
 細々とカメラの修理をしていましたが、ブログに載せますと、
 かなりの反響があり、うれしいやら、驚くやら・・・。
 今後も続けて生きたいと思います。よろしくお願いします。
by Fuzzy (2007-06-06 14:37) 

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